まっすぐにB1へ。<前半>(熊本ヴォルターズインタビュー)

B2リーグ西日本地区の熊本ヴォルターズは昨シーズン(2017-18シーズン)でB2リーグ西地区第2位となりB2プレーオフ(B2リーグ優勝決定戦)に出場し、B2リーグ全体で第3位となりB1との入れ替え戦に出場(B2プレーオフ1位・2位はB1へ自動昇格)。惜しくも敗れ、目前のところでB1昇格を逃しました。
今シーズン(2018-19シーズン)はどんな想いで戦うのか。シーズン目前の8月、小豆島キャンプで西井GM(ゼネラルマネージャー)、保田HC(ヘッドコーチ)、岐津AGM(アシスタントゼネラルマネージャー)にスポーティーズ渡部がお話を伺いました!前半・後半と2回に分けてお伝えいたします。


 ▲左から 岐津AGM、渡部、西井GM、保田HC


今シーズン、ダントツ1位でB1昇格を目指す


渡部:小豆島でのキャンプも3日目ですね!この時点(8月上旬)でもうメンバー全員が揃っているって相当早いスピード感を持っていると思うのですが、今シーズンの熊本ヴォルターズがどこに向かっているのか詳しくお聞きしたいです。

西井GM:シンプルに、B1昇格を目指しています。
まず、昨シーズン(2017/9~2018/5)で僕と保田が進退をかけて目標にしていたB1昇格というところにあと一歩で届かなかった。僕も保田も昨シーズンに本気で賭けていたし、B1昇格が叶わなかった時点で辞めるのか、悩みました。でもその責任の取り方を考えたときに、僕がいることでB1への可能性が高まるなら、今度こそB1昇格するという想いで今シーズンも熊本に残りました。僕がいるから保田も残ってくれるという信頼関係もあったと思います。

保田HC:コーチの世界からしても3年でチームを作るという一般的な考え方があって、僕がHCとなって3年目の今シーズンは自分がHCとして熊本でB1を目指すラストチャンスだと思っています。
昨シーズンは核の選手の怪我もオールシーズン続き、チームとして耐えて、耐えて、成長して・・・やっと全員怪我から復帰したのがB2プレーオフ(B2リーグ優勝決定戦)前で、そのあたりでやっと自分たちがずっとやりたかったプレーができて、僕の2年間の集大成といった手ごたえを感じたまま昨シーズンを終えました。この手ごたえを今シーズンに活かしたいです。

渡部:どういう形でB1昇格を目指しているのか、教えてください。

保田HC:今シーズンやるべきはスタートダッシュだと考えています。まずはアーリーカップ西日本(2018/9/7-9開催のB1・B2リーグの枠を超えた地区別トーナメント)優勝を目標にしていて、これまでより2~3週間早いチーム作りをしています。このキャンプには全員揃うように逆算して外国人選手にも来てもらい、計算通りのタイミングで今回の小豆島キャンプに来ています。アーリーカップまではチーム練習として練習試合を毎週のように行って弱いところを補強していくことを続けて、いい形で開幕戦を迎えたい。レギュラーシーズンではダントツの地区1位通過でB1昇格を目指しています。



勝負し続けているから今がある


渡部:何が何でもB1へ。そのこだわりは強い?

保田HC:チームとしても、僕としてもそれしか道が無いから、と考えています。昨シーズンの入れ替え戦でB1とB2の差が縮まったんだというのを熊本ヴォルターズが証明できたことは大きかったと思います。「熊本はB1を目指すチーム」という意識が多くの人に芽生えたと思います。

西井GM:なんでもそうだと思うんですが、勝負していかないとダメになっていく。今Bリーグの中でも熊本はいい流れにいて、それはB1を目指し続けているからだと思います。だからこそ、B1を目指す、実力ある選手が集まってきているのではないかと思います。

保田HC:今核になっている小林、古野、中西は僕たちと一緒で熊本地震を経験していて、B1に昇格することで復興を推し進めていこうという想いを持って戦っています。そのことを思い出せてなかったら今の時期の練習であんな高い集中力と強度で練習できてないだろうし、この想いが無かったら熊本のチームに残ってくれてないと思うんです。


ストーリー性を大切にチームを継承していきたい


渡部:今シーズンのチーム編成について聞かせてください。

保田HC:僕たちが大切にしたかったのはこの2年間頑張ってくれた古野や中西のラインを中心にこのチーム構成を考えていく、ということでした。チームのアドバンテージをどこに作るのか、というのは考えながら構成しています。選手の組み合わせ次第で選手の活き方が変わってきますので。



 ▲古野選手・中西選手

西井GM:シーズン終了後に次シーズンの契約について選手一人ひとりに当たっていくわけですが、彼らにとってこのチームに残ることがベストなのか、違う道なのか、というのはあると思います。僕らは君たちと戦いたいと伝え、お互い向き合って交渉してきました。
外国籍選手のベンチ登録の人数、オンザコートのルールが変更したのもあり、かなり悩みましたね。会社からは「B1に行けるチームを作ってくれ」という1点に集約されていて、このメンバーしかない、という構成ができたと思っています。
熊本の皆さんは地震前、チームが負けていた姿を見ているし、地震後、立ち上がっていく姿も見てくれているのでこのメンバーでのドラマをできるだけ継続して見せていきたい、というのもあります。震災があったことで自分自身と熊本ヴォルターズを重ねてくださっている方も多く、メンバーが一新することでそれまでのストーリー性が消えてしまうのは避けたいという思いもありました。

渡部:このキャンプが決まったときに熊本ブースターさんからメッセージが届きまして。「彼らは今地震の清算をしようとしてると思うんです。B1にいくことで復興していくというストーリーのために、最高の環境を作ってほしい」といった内容で、球団冥利につきるというか、まさにそういった思いをもっているファンの方はいらっしゃるんでしょうね。

西井GM:ここまで主力選手やコーチ陣が長く変わらない、ストーリー性のあるチームはなかなか無いと思います。小豆島に3年連続来ていますが、メンバーが結構変わっていたらこんなに小豆島のみなさんと親しくなれなかったと思うんですよね。いつものメンバーが頑張ってるから応援してくれてる、ってあると思うんです。



 ▲キャンプのウェルカムセレモニーでは小豆島のファンが駆け付けました!

渡部:このチームの面白いところが、西井GMが選手以上に前面にでてるところですよね。保田HCも岐津AGMもセットでチームっていう。

西井GM:ファンが楽しくなるんだったらやろう、っていうのはありますね。けして自己満足ではないんですよ(笑)。



 ▲選手と共にSNSに度々登場する西井GM・岐津AGM


新加入のトレーナー陣は、キーパーソン


渡部:今シーズン、フィジカルを支えるスタッフを充実されましたね。新加入の土屋AT(アスレチックトレーナー)と窪田SC(ストレングスコーチ)についてお聞かせください。

西井GM:保田HCが残ってB1を目指す上で体づくりは重要だと考えている中、主要選手と話したときに彼らもそこは重要視していたので、キーパーソンだと思っています。このトレーナー陣の加入は主要選手がチームに残ってくれた要因のひとつでもあったと思います。



 ▲土屋AT



 ▲窪田SC


保田HC:コンスタントに長いシーズンを戦える体力作りとしてシーズン前から強い強度でトレーニングしていきたいという思いで窪田SCを最大の補強として加入させました。プレーオフに入る前にはこの体制は見えていましたね。

西井GM:昨シーズンは予算も追いつかなかったんですが、今シーズンは予算も増えたので優先的に強化できたところですね。

渡部:今シーズンの選手との交渉の流れなどをお聞かせください。

岐津AGM:今シーズンの編成の構想自体は昨年12月頃からありました。「こんなタイプの選手がほしい」という話は西井GMとしてきました。4~5人ずつお互いいいなと思う選手をピックアップして。リーグの規定上、1月以降であれば選手にコンタクトが取れるので、探りをいれたりしてました。
このチームがB2に残ると決まった翌日からB2でのチーム編成について本格的に話しはじめました。新規選手についてはアポをとって、西井GMがなるべく会って直接会いに行っていましたね。

西井GM:愛媛に急遽日帰りで行ったりね。会って話してみないとお互いの真意もわからないし、齟齬が無いように確認する作業を大切にしています。ちなみに真生(福田真生選手)のときは特例で、北海道まで飛んで会いに行ったのですが、シャイすぎるのかうまくコミュニケーションが取れなくて。全然喋らなくて、「はい」とか「うん」しか言わないので不安になりました(笑)。

保田HC:後から僕が電話して話してみて、大丈夫そうだなと思って僕の強い希望で来てもらいました。

渡部:小豆島キャンプでは何度か福田選手の誕生日のタイミングがあって、みんなでお祝いする時にニコニコしているイメージですけどね~。そんなにシャイだったとは!



 ▲小豆島キャンプでの福田真生選手お誕生日お祝いの様子(2017年)

渡部:話を戻しますが、昨シーズンのプレーオフに出場していたことでチーム編成が遅れてもおかしくない中、Bリーグ全体でもメンバーが決まるのが早かったですね。

西井GM:僕らは昨シーズンBリーグの中でも最後まで戦っていたので一番スタートダッシュが遅いはずなんです。だからこそ危機感を持って例年より早く動けていたと思います。
チーム編成が早かったのは会社がかなり努力してチームの予算を作ってくれた、というのが大きいです。昨シーズンよりも予算を増やしてくれました。どうしても勝率や順位が集客に影響を及ぼすところがあって、会社が集客を増やしたい、スポンサーを増やしたいと考えたときに、チームを強くしてB1に行くことが今一番大切にすべきところだという共通認識があり、そこは強みですね。


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インタビュー前半でははっきりと「B1昇格」と全員が明言し、そのゴールに向かって逆算して準備してきている様子が伝わってきましたね。チーム編成についてのやりとりなど、普段なかなか知ることのできないお話も聞けました。
インタビュー後半では西井GM、保田HC、岐津AGMの3人がどうチームを育ててきたのか、日々何を大切にして熊本ヴォルターズとして戦っているのかを伺いました!
⇒後半はこちら!!

熊本ヴォルターズ HP
アーリーカップ西日本2018 HP 
(文:小林繭子
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